昆虫の高速な羽ばたき運動は,筋肉の働きで変形する外骨格の挙動が重要な役割を果たしていますが,これまでは2次元の単純なモデルでの説明に限られていました。安藤准教授らは,高い飛行能力を持つスズメガ(ガの一種)の胸部(筋肉と外骨格)の三次元構造を,マイクロCTや三次元構造顕微鏡による連続切片画像から精密に再現したモデルを作成しました。そして,構造設計で用いられる有限要素法解析を用いて,筋肉の活動と外骨格の変形が羽ばたき運動を生み出す一連の流れをシミュレーションで再現することに成功しました。これらの知見は,素材の持つ柔らかさを利用し,シンプルな制御で多様な動作を生み出す生物の動きのメカニズムの解明につながる成果です。
本研究は,Bioinspiration & Biomimetics誌(英国物理学会出版局)に掲載されました。
掲載誌情報
Ando, N., Kono, T., Ogihara, N., Nakamura, S., Yokota, H. and Kanzaki, R. (2022). Modeling the musculoskeletal system of an insect thorax for flapping flight. Bioinspiration & Biomimetics 17, 066010. https://doi.org/10.1088/1748-3190/ac8e40