21世紀の新時代を担う科学技術には、自然と調和のとれた、人類にとって真に豊かな生活の実現に向けて発展していくことが求められている。従って技術者の教育にあたっては、専攻する専門分野の先端的な知識と洗練された高度な技術を修得させるだけでなく、多様で新しい価値観に基づいて、自ら課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる能力の醸成を促すことが求められる。
そこで本学大学院工学研究科では、人にやさしい高度情報化した地域社会の創造に貢献するために、また、来るべき福祉・循環型社会においてあるべき高度都市化の実現に向けて、地域環境と調和する基盤整備、人間と都市および自然との調和ある生活空間の創造、高度情報通信システムの推進と地域情報社会の構築などの諸課題に取り組む教育研究を展開することを特色とし、これらを研究開発する能力と技術を有する人材を養成する。この目的に向かって、本学大学院工学研究科博士前期課程を5つの専攻体制に改編する。
なお、この改編により、平成13年度に開設したシステム情報工学専攻の平成23年度以降の学生募集を停止し、現在同専攻に在籍する学生の修了をもって、同専攻を閉じる。
建設工学専攻、建築学専攻、※生命情報学専攻、※システム生体工学専攻、※生物工学専攻
以上、5専攻(※新設する専攻、システム情報工学専攻は学生募集を停止)
⇒ 参照: 「大学院専攻改編図」
平成23年4月
生命情報学専攻は、情報科学と生命科学の融合を推し進め、地域から世界へ知を発信する生命情報学の研究教育拠点を目指す。そのために、知的情報処理技術やそれを応用した情報システムの研究開発を図る高度専門技術者、ゲノム、タンパク質などの生物情報の情報学的解析やそれを応用した情報システムの研究開発を図る高度専門技術者、ならびに知的情報処理あるいは生命情報科学分野における研究能力の基盤を備えた人材を養成する。
インターネットを基盤に知的情報処理技術を応用した高度な情報システムやコンテンツを開発する能力、新たな知的情報処理技術を開発する能力、生物情報を情報学的手法で高度な解析を行う能力、あるいは生物情報から医学や農学の応用に関する高度な情報を引き出す能力を習得させる。
生命情報学専攻では、知的情報処理領域と生命情報科学領域を設け、それぞれの領域に特徴ある教育研究を行うとともに、学生に共通な基盤として自律的に研究開発を行う力を習得させる。このため、問題設定、計画、情報収集・分析、問題解決の一連の過程を体験型で学ぶプロジェクトとインターンシップ、ならびに最新の研究開発動向を質疑応答を交えながら学ぶ特別講義から成る専攻開設科目を配した。
情報科学の基礎を持ち、生命科学と情報科学の融合に貢献できる人材供給が求められている。
具体的には情報産業分野への進路、特にその中でも生命情報システム開発分野への進路、などが可能である。また、情報システムは様々な産業分野へ幅広く応用されているので、機械、電機、医療・研究機器産業などへの進路が可能である。
さらに、自律的に研究開発を行う能力を習得するように教育課程を配慮しており、博士後期課程への進学あるいは研究機関等への進路も可能である。
システム生体工学専攻は、工学と医科学の融合分野における健康長寿の社会的ニーズの実現と地域の振興に基づいて、ユビキタス環境の実現に貢献していくことを目的とする。そのために、生体情報計測システム、生体機能制御システム、システム神経工学の3つの領域を教育研究の柱とし、社会情勢や健康長寿の社会的ニーズを的確に把握し、それを工学シーズと融合させることができる高度で知的な素養を備え、多様に変化する社会で柔軟に活躍できる高度専門技術者ならびに工学と医科学の融合分野において世界で活躍できる創造性豊かな研究能力の基盤を備えた人材を養成する。
システム生体工学専攻は、工学と医科学の融合分野における幅広くかつ高度で最先端の理論とその応用力ならびに実践力を習得させるとともに、各専門の領域から生まれた最先端の成果を活用して、疾病の予防や根本的な健康回復、障害者・高齢者の心身の自立、介護者の負担軽減のための福祉の向上ならびに生体情報を安全に正確かつ高速に活用するためのシステム構築ができる能力を習得させ、健康長寿社会のためのニーズの実現と地域社会の振興に基づいて、ユビキタス環境の実現に貢献する教育研究をおこなうことを目的とする。
具体的には、プロジェクトとインターンシップを通して、工学と医科学の融合分野におけるニーズとシーズの関連課題の解決を実践させ、発想力、論理的思考力、批判力、情報収集力、問題解決力、表現力、コミュニケーション力、交渉力などを養成する。これらの養成と並行して、生体情報計測システム領域では、未病の発見のための生体モニタリングシステムや生体情報処理などに関する教育研究をおこなう。生体機能制御システム領域では、生体機能に電子機器や機械システムを積極的に係わらせた生体機能の回復と支援を主体とする教育研究をおこなう。システム神経工学領域では、神経システムの機能とその計測法ならびに神経機能を利用した生体機能の回復と支援システムを教育研究する。さらに、これらの教育研究から生まれた医療機器や福祉機器などが、日常生活を営む人々と協調するためのユビキタス環境に関わる学術を教育研究する。
前橋市が「生命都市いきいき前橋構想」を掲げ、高度医療の整備と福祉の充実を街づくりの基本政策に据えている。将来は、これをモデルとしたユビキタス環境の実現が期待される。そのためには、医科学と工学を融合した高度な学術に基づいて、その実現に貢献できる人材の確保と将来に亘った人材供給が求められている。貢献すべき対象地域は国内および海外に及ぶ。
具体的には、医療福祉産業分野への進路と、計測技術、電子情報・制御を含むメカトロニクス分野への進路、及びニーズの実現手法に関する高度な学識と経験を併せ持つことから、一般の情報産業、エレクトロニクス産業や精密機械産業への進路などが可能である。さらに、将来世界的に活躍できる研究者の基盤を備えた人材養成も図れるように教育課程を配慮しており、博士後期課程への進学あるいは研究機関等への進路も可能である。
ライフサイエンスは、日本の将来の成長に欠かせない重要技術とされている。一方、本学の設置者である前橋市では、「生命都市いきいき前橋」を実現する中で、新産業・新技術の創出を図ることを企画しており、その知の中核として本専攻への期待は大きい。以上のような社会の要請の中で、生物工学専攻は、健康・食・環境の応用分野で地域社会と共同して新しい産業技術の創出を図ると共に、将来産業界の中で生物工学研究の成果を実用化していく高度専門技術者の養成を担うことに重点を置きつつ、将来博士後期課程に進学し研究者への進路を開く能力を有する人材も養成する。
豊かな創造性と主体性を持ち、産業界で生物工学分野のリーダーとしての素養、専門知識を駆使できる能力を涵養することを目的とする。そのために学部教育で培われた専門の基礎能力を土台に、研究科共通科目により社会で直接役立つ知識の修得を目指すとともに、生物科学領域と生物利用領域を設け、それぞれの領域に特徴ある教育研究を展開する。また、生物工学分野は仮説の実証が極めて重要なので、専門分野の最新実験技術・知識の習得に力を入れるため、配属研究室での演習・実験研究とマンツーマンの教育に重点を置く。
生物工学専攻は、生物の持つ精巧かつ多様な機能を効果的に活用し、健康・医療分野、食分野、環境分野における21世紀の課題を解決する高度専門技術者養成並びに研究者養成を目指している。
具体的には、医薬品、食品、化粧品等の製造会社・環境関連ビジネスや分析試験機関、国や地方自治体のバイオ関係研究機関において研究成果実用化に携わる高度専門技術者・研究者としての幅広い進路が可能である。