セメントは,製造時に各種の廃棄物や産業副産物を使用することで廃棄物処理の問題に多大な貢献をする一方で,製造時の焼成プロセスで多量のCO2を排出するという宿命を持っています。混和材料を用いたセメント系材料は,CO2排出量を大幅に削減可能な点で近年特に注目を集めており,本研究室では,混和材料の水和反応に立脚した硬化体の物性評価・予測を行うことで,低炭素化社会と高耐久インフラの実現に貢献する研究を行っています。
製鉄所からの副産物である高炉スラグや石炭火力発電所から排出する石炭灰(フライアッシュ)は代表的な混和材料であり,それぞれ高炉セメント,フライアッシュセメントとして使用されている。近年では,高炉スラグの含有量を高めた高炉スラグ高含有セメントの開発・実用化研究に参画し,コンクリート構造物のCO2排出削減と高品質化の両立を目指した研究を進めている1)。また,高炉スラグやフライアッシュは,セメントを使用しないジオポリマーコンクリートの結合材としても近年注目されており,土木学会コンクリート委員会の調査報告書の取り纏めを行った2)。その他,木質バイオマス発電所から排出される焼却灰や火山灰についても,セメント混和材へ適用した際の反応性などについて評価を行っている3,4)。
1)日本スラグセメント・コンクリート技術研究会ホームページ,https://jscca-slag.com/
2)土木学会コンクリート委員会,新しいアルカリ活性材料を用いた低炭素社会におけるインフラ構築に関する研究 報告書,2022
3)佐川,木質バイオマス焼却灰の反応性評価とセメント混和材への適用,日本建築学会大会,2018
4)勝野,上原,佐川,火山ガラス微粉末のセメント混和材への適用,第74回セメント技術大会,2020
コンクリートの環境負荷低減やコンクリートの高機能・高性能化,各種の分析機器を用いたセメント系材料の水和反応解析に関して,建設会社,生コン,コンクリート製品会社,各種混和材料を副産する製鉄産業,電力事業者などとの産学連携が可能です。
本研究室では,セメント系材料の基本的な研究施設に加え,粉末X線回折装置(XRD) ,熱重量/示差熱測定装置(TG/DTA),エネルギー分散型蛍光X線分析装置(XRF),等温熱量測定装置,XRD/リートベルト解析ソフトウェアなどを有し,混和材料を用いたセメント系材料の水和反応を精緻に評価することが可能である。